桜の森の満開の下

2007/03/24(Sat) *Pickup, Book

桜の森の満開の下 表紙
桜の森の満開の下
坂口 安吾 (著)

そこは桜の森のちょうどまんなかのあたりでした。四方の涯は花にかくれて奥が見えませんでした。日頃のような怖れや不安は消えていました。花の涯から吹きよせる冷めたい風もありません。ただひっそりと、そしてひそひそと、花びらが散りつづけているばかりでした。彼は始めて桜の森の満開の下に坐っていました。いつまでもそこに坐っていることができます。彼はもう帰るところがないのですから。

ときどき読み返してしまう。青空文庫でも読めます。桜には狂気があり、人間はそれに触れると、理由もなく人を殺すことが出来る。そしてそれは自分自身の死でもある。殺人には理由があると考えがちだけど、それは部外者が自分たちにはそういう理由がないから自分たちは人を殺す人間ではないという意識を持つために結果的に作られるだけで、本来人は理由もなく人を殺すことが出来る生き物なのだと思う。ただ、人のつながりや社会システムによって、それが起きにくいように予防線をはっているだけで、本来はやはりそういう生き物だと思う。この本は、そういう書いてはいけない、気づかせてはいけないことを書いてしまっているように思う。

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