僕はパパを殺すことに決めた

2007/06/23(Sat) *Pickup, Book

僕はパパを殺すことに決めた 表紙
僕はパパを殺すことに決めた
奈良エリート少年自宅放火事件の真実
草薙 厚子 (著)

-本書を少年が手にすることがあるかどうか、私には分からない。
  ただ、この言葉を最後に記しておきたいと思う。-

2006年6月20日、奈良県で発生した16才の少年が父親への恨みなどから、父親が不在と分かっていながら家に放火をし、継母とその次男、長女が遺体となって発見された事件。なぜ少年は父親が不在と分かっていながら火を放ったのか、なぜ父親を殺そうとしたのかを、3,000枚の供述調書をもとに分析している。著者と出版社は、奈良家庭裁判所から供述調書の不正引用で抗議を受けている。

供述調書の内容はとても興味深い。少年、父、実母、継母たちがある一つの出来事について語る時、それぞれが記憶している描写や、関係性や、その原因と考えていることが全く異なっている。一つの出来事が、視点が変わればこれほどまでに違うのかと今更ながら驚かされる。

はじめは小さな歯車のズレだったのに、それがどんどん、どんどんと広まっていって、だんだんと取り返しの付かないゆがみを生んでいく様子が克明に書かれている。そしてその登場人物の多くが、自分は間違っていたといいながらも、その語る言葉からは、本人が本当のところでその原因を理解できていないと思われる記述が多いことに軽い絶望も覚える。

被害者の遺族でありながら、同時に加害者の親にもなったこの残された父親と、何年かしてまたこの世界に戻ってくる少年との暮らしを想像すると、また同じ事が起きるような気がしてならない。何が一番悪いのかは、僕には分からない。


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