ジーン・ワルツ

2008/06/02(Mon) Book

ジーン・ワルツ 表紙
ジーン・ワルツ
海堂 尊 (著)

医療は学問ではなく、社会システムです。医学は単なる学問。医学という土台の上に、国民の意思で医療という家を建てるようなもの。そこでは医学の結果と正反対のことが行われることもあります。

私、この子に、十ヶ月生きてきた証に、この世界の光を見せてあげたいんです。

チームバチスタ等を書いた著者が描く生命の誕生にまつわる世界。人工授精、代理母出産、赤ちゃんポストなど命の始まりの深みに入り込んでいく話。バチスタシリーズよりも、著者が小説を書く目的としている医療の現状を知ってほしいという意志が強いように感じる。故に、小説的な面白さはちょっと少ない。その代わり、出産にまつわる現実はよく知る事が出来る。

あくまでも小説の話として感じたところを記しておくと、主人公曾根崎理恵は、ちと踏み込みすぎているように思う。個人的には代理出産とか赤ちゃんポストとか賛成なのだけれど、現実的に可能だからといって何でもしていいわけじゃなくて、僕らは神でも天使でも悪魔でもなく人間なのだから、それらの領域に踏み込むときにはある程度の倫理観みたいなのがいると思うんだけど、この主人公にはちょっと足りていないように思う。

主人公がちょっと道から外れてでも達成したい目的の意義(おそらくは、少しは著者の意志)は分かるけれど、もしそれを真剣に貫くんだったら、子供が生まれ、成長し、その子供がまた子供を持つところまで描いてほしかったなぁと、ちょっと物足りなさを感じる。著者には十分、それを描けるだけの筆力はあると思うのだけど。

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