ユニクロ帝国の光と影
「これからは『会社という場所に自分の自営業をするために通っている』という意識を持たなくてはダメだと思うんです。」
ファーストリテイリングが、出版差し止めと2億2,000万円の損害賠償を求めて訴えている本。著者は、以前アマゾンの配送センターにアルバイトとして入った本を書いた人。「光と影」となっているが、ワンマン経営、オリジナリティのなさ、次々と辞める幹部、厳しすぎる接客ルール、中国の生産工場での劣悪な労働環境など、影の面を列挙したという印象が強い。
読み終えて、柳井氏はただただビジネスをしているだけではないかという印象を持つ。世界一のSPA(製造小売業)であるZARAを目指して、そのギャップを埋める為に何度も失敗を繰り返しながらただただ邁進している経営者。理想通りにならなくて歯がゆい事もあるだろうし、欲もあるだろうし、考え方が変わる事もある。それはまさに、どこにでもいる経営者であると思う。
著者は、柳井氏に何を期待していたのだろうと思う。菩薩のように完璧である事を期待したのだろうか。決算数字が改善してきているのに最悪の決算と断じ、自ら任せた当時の玉塚社長を解任した事に結構こだわっているようだけれど、以前上場企業にいた時に感じたことでもあるけれど、決算数字だけで企業の状態を判断することは難しく、数字が上向いていても内部は崩壊していっている時もあるし、その逆もある。
冒頭に引用したのは、個人的に共感した柳井氏の言葉。この時代の働き方としては、ひとつの解であると思う。経営者はよく、全員経営、全ての従業員が経営者の視点を持てというが、個人的にそれは難しいと思っている。意識、能力、背負っているもの、把握している情報量などさまざまな障害がある。業種などにもよるが、会社という場所での自営業、という感覚はちょうどいいのかもしれない。

