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右翼と左翼

2008/12/23(Tue) Book

右翼と左翼 表紙
右翼と左翼
浅羽 通明(著)

「左」「左派」は、人間は本来「自由」「平等」で「人権」があるという理性、知性で考えついた理念を、まだ知らない人にも広め、世に実現しようと志します。これらの理念は、「国際的」で「普遍的」であって、その実現が人類の「進歩」であると考えられるからです。

(中略)

対するに「右」「右翼」は、「伝統」や「人間の感情、情緒」を重視します。「知性」や「理性」がさかしらにも生み出した「自由」「平等」「人権」では人は割り切れないと考えます(「反合理主義」「反知性主義」「反啓蒙主義」)。ゆえに、たとえそれらに何ら合理性が認められないとしても、「長い間定着してきた世の中の仕組み(秩序)である以上は、多少の弊害があっても簡単に変えられないし、変えるべきでもない」と結論します。

本書では一応ざっくりと引用したような定義がされているんだけれども、個人的には「右は現実主義・現実肯定」「左は理想主義・理想追求」という考え方の違いだけであって、目指すところは同じ、表現方法(戦争かテロ)が違うだけでロジック(この考えを世界に広めなければ!的な)は同じように感じた。

日本で言うと、戦後など社会の様々なクオリティがあまりにも低かった時代には理想を追求する左翼がもてはやされたけれども、ある程度物量的に満たされてきた現代では左の力が弱まり、日本の右傾化と言われるような傾向になってきた。でも、社会や経済情勢が不安定になった今左が再び強まってきた。という感じではないかと。

既に権力や実務運営をしている政権与党や高所得者は現状肯定・改善という考えで右に振れやすいだろうし、そういうものを持たない一般市民や低所得者やマイノリティは格差破壊や平等の実現という考えで左に振れやすいという印象がある。

僕は、これだけ価値観が一極にぶれやすい日本社会の中で、常に一定の価値観を保っている皇室は価値があると思うし(皇室関係予算180億の6割(110億)を占める宮内庁費はもっと削減できると思うが)、人間はそんなに高尚なものではないと思っているので右寄りなのかなぁと思う。でも、「自由」「平等」「人権」が実現できるものならそりゃあそうなった方がいいと思ったりもするので、右7:左3ぐらいなのかなぁと。

がん緩和ケア最前線

2008/11/16(Sun) Book

がん緩和ケア最前線 表紙
がん緩和ケア最前線
坂井 かをり (著)

自分は今がんではないし、身近にがんの人がいるわけではないのですが、そういう状況だからこそ客観的に読めるのではないか、と思って読んでみた。客観的に読み過ぎて全然実感は得られなかったんだけれど、切迫した状況の中で読んで考えが偏ってしまうよりはいいんじゃないかと思った。

本の中では、緩和ケアが積極治療の放棄ではないということを繰り返し主張していて、積極治療によって正常な細胞までダメージを受けたら緩和ケアでいったんダメージを回復させまた積極治療に戻ることや、初期の段階から緩和ケアと積極治療を共存して進めていくことなどを提案している。

ただ、現状だと医師の側が緩和ケアに患者を引き渡すことは医師としての敗北だというような変なプライドがあったりして、緩和ケアをネガティブなイメージでとらえまた患者にそのようなニュアンスで伝えるため、本来の緩和ケアが目指すところが実現されていない、という実情も紹介している。

まあ人はどうあがいても死んでしまうわけで、そうなると大切なのはそのプロセスなのかなぁと思う。そうなると、当人が一番納得できる、後悔しないと考えていることを実現してあげるのが最良なのかなぁと、一般的な結論になってしまった。

空白の宰相 「チーム安倍」が追った理想と現実

2008/11/11(Tue) Book

空白の宰相 「チーム安倍」が追った理想と現実 表紙
空白の宰相 「チーム安倍」が追った理想と現実
久江 雅彦 (著), 柿崎 明二 (著)

「チーム安倍」は崩壊していない。はじめから実態として存在していなかった。それが、一年で幕を閉じた安倍政権の断面を取材、検証した率直な印象である。

道路特定財源、公務員制度改革、日本版NSC、防衛庁(当時)事務次官人事、松岡農水大臣の自殺など、安倍内閣が取り組んだ様々な理想とその現実の裏側を追いながら、「理想は高いが実行力のない安倍総理」を描き出している。中に出てくる細かい政治家のやりとりの真偽のほどは定かではないけれど、結果から見ると当たらずとも遠からずといった所なのかな、という感じがする。

壊してばかりでは何も進まないわけで、そういう総理の後に国の根本となる憲法と教育を持ち出してきた安倍元総理には、直近数人の総理の中では一番期待していた。歴代議員の家系であることも、安定した地盤があるが故に現実直近の課題にとらわれずに長期的な政策が出来るのではないか、と期待していた。まあ結果はあの通りなんだけれど。

直近のエントリで文民統制(文民(=政治家・国民)による軍隊の統制)について触れたけれども、文民統制よりももっと深刻なのは、文民による官僚の統制が出来ていないことなんだろうな。あからさまな死者数というのが出ないので軍隊に比べて目立たないけれども、軍隊によって亡くなった人の数と比べた時、官僚の無策や失策によって亡くなった人の数や遺失利益というのも、相当数あるんじゃないかと思う。

公務員制度改革のあたりで、「公務員の天下りや待遇をなくしてしまうと、優秀な人材が集まらなくなる」という官僚の言葉にはちょっと呆れて笑ってしまった。あなた達の言う優秀な官僚が集まって「このザマは何なんだ」と某知事風に言ってみる。政治家が無能だとでも返してくるのかな。

こぼれる

2008/11/09(Sun) Book

こぼれる 表紙
こぼれる
酒井 若菜 (著)

ルービックキューブは、一、二面を揃えるくらいは簡単だ。大介は、自分の面を揃えることだけに夢中だった。他の面は、雫といる時は雫の色だけを揃えようとして、千尋といるときは千尋の色だけを揃えようとした。

どちらか一方の面に夢中になっている間、残された一方の面がぐちゃぐちゃになっている事に気がつかなかった。あげく、一面も揃えられなかった。そして、大介のルービックキューブは完全に壊れた。

女優、酒井若菜の処女小説。「実体験を元にした不倫小説」という扱いをされたみたいですが、特にそういう先入観なく読んだ。それまでも酒井若菜はまあ好きな方で、ブログを読んでいるとその言葉遣いや表現が面白いので、きっとこの子ならいい小説を書くだろう、という期待は少しあった。結果、自分のベスト3に入るくらい好きな小説になった。

正直言って書き方は下手だし、物語の展開もありきたり。ありきたりというか、初めて小説を書くとそうなっちゃうよね、という書き方。僕が一度小説を書いたときに迷った事と同じような所に迷いが感じられるし、いくぶん唐突な展開もああそうしちゃうよねぇ、と可愛く読んだ。

それでもこの小説がベスト3に入るのは、妻子ある夫と不倫している女性にしか感じられない心境だったり、好きな女の子に気持ちを伝える方法が分からない男の子だったり、その男の子が好きな別の女の子の長い長い思いの積み重ねだったり、そういう一人ひとりのキャラクターの心理描写がとてもリアルで美しく、また共感できるものだったから。

自分の勝手な印象だけれど、小説を書くときというのは、取材やインタビューを元にゼロから物語を作り上げていく人と、自分の中の経験や感情をはぎ取るように文字に落としてして物語を作り上げていく人の二つのパターンがあるように思う。そして、初めて書く小説は後者が多いように思う。もし酒井若菜が後者だったら、とってもいい経験をしてきたんだろうなぁと、勝手に思う。下手な小説家の物語よりも、よほど心を揺さぶられた。

受託開発の極意

2008/11/09(Sun) Book

受託開発の極意 表紙
受託開発の極意
–変化はあなたから始まる。現場から学ぶ実践手法
岡島 幸男 (著)

要件を定義するには、ユーザと同じ視点を持つ必要があります。つまり、どうやって作るか(How)ではなく、何を作るか(What)、なぜ作るのか(Why)という意識をもたなくてはいけません。

開発者は視点を切り替えなくてはいけません。システムを作る立場ではなく使う立場で考え、お客様と一緒に考えを整理していく必要があります。

そこに必要なのは広い意味での問題解決能力であり、プログラミングや設計のスキルだけでは足りません。業務に対する知識はもちろんのこと、要件を引き出すために高いコミュニケーションスキルが必要となります。

同じ福井の永和さんの本。ちょっと前にネットの中でもいくつか取り上げられていたので、受託の現場に帰ってきたら読もうと思っていた。「SEの教科書」とだいたいの主張は同じなんだけれど、クライアントとの接し方、見積もりの作り方、要件定義の仕方と具体論に踏み込んでいる。

こういういろんな本を読んでいると、あるべき受託開発へのイメージがだいぶハッキリしてくる。今の時点でイメージしているのは「結果に責任を持って物も作るコンサル」といったところ。コンサルと書いたのは、コンサルって口だけなイメージがあるので(失礼)、実際にそれをクライアントと一緒に作っていくサービス業のようなイメージ。

クライアントから言われたシステムをクライアントから言われたとおりに作ったり、いかに他社より安い金額で開発するかに心血を注いだり、自分たちのやりたい技術のエゴを振り回してクライアントを放っておくのではなく。クライアントの求める物と自分たちが持っている技術の間を探り、必要とされているニーズを解決する事が、本来の受託開発という仕事なんじゃないのかなぁという気がする。

この本では最終的には組織を変える事にまで言及しているけれど、できればクライアントを変えるという所にまで踏み込んで欲しかった。安かろう悪かろうのシステムを求めるクライアントは最終的にクライアント自身が損をして、システム開発に対するイメージがどんどん悪くなって次の案件でも同じような事を繰り返してしまう、というのはどう解決したもんだろうか。

SEの教科書2

2008/11/09(Sun) Book

SEの教科書2 表紙
SEの教科書2
~成功するSEのプロジェクト計画・運営術
深沢 隆司 (著)

読者の皆さんの会社のプロジェクトが、必ずと言うほど遅延したりコストオーバーになったり、多くの仕様変更やバグが発生しているとして、それを読者自身が「仕事とは、プロジェクトとは、そういうものだ」と考えているとしたら、あなたの脳の仕事で使っている部分は、すでに誰か他人のものになっている(あなたの思考パターンではない)かもしれませんので、そう自覚してください。(中略)

そして、これが行われていないために、本来は頭脳労働のはずが、実際には体力勝負、頭脳勝負の業界になってしまっているのではないかと思います。

前作のSEの教科書を借りて読んですごく面白かった記憶があったので、本屋でこれを見かけて即買ってみた。前回に引き続き結構面白くて、スケジュールを立てるタイミングやその組み立て方は参考になった。

これを読んでいると、SEとかプログラマーに必要なスキルというのは、もちろん技術も必要なんだけれど、コミュニケーション能力な気がしてくる。まあコミュニケーション能力はどんな仕事でも大事なんだけれど、SEやプログラマは他の業種に比べてその辺を軽視しているような気がしてくる。

陳腐な例だけど、クライアントがとんでもない要求をしてきてその実現方法を必死に考えていたのに、営業がシンプルに実現できる代替え案を提示したらあっさりOKをもらってしまったりと、技術だけ、自分たちだけで考えてしまう傾向があるように思う。

そこで大事なのは、やっぱりクライアントが何を求めているのか、どういった課題を解決したいのかという「何が問題なのか、どうしたいのか」を技術手法ではなくニーズというレベルで把握する事なのかなぁと思う。

佐藤可士和の超整理術

2008/11/03(Mon) Book

佐藤可士和の超整理術 表紙
佐藤可士和の超整理術
佐藤 可士和 (著)

整理して新しい視点を見つけるという事は、それまで見えなかったものが見えてきて、視界がクリアになるという事。新鮮な気分になったり、インパクトを与える切り口が見つかったり、人を感動させるポイントが把握できたり、ポジティブな発見がたくさんあります。つまり、視点を見つけたその時点で、アイデアの糸口になっているはずなのです。

クリエイティブなイメージの佐藤可士和いう単語と、地味でロジカルな整理という単語の組み合わせが新鮮で買ってみたら、いい意味で裏切られた。本の中でも書いているけれど、本人は自分の事を「自己表現をしているアーティスト」ではなく「クライアントを診療し問題を解決していくドクター」と捉えているらしく、それを聞いたら納得。

クライアントが見えていないところまで客観的に対象を分析し、グループ化したり優先順位を付けながら何が問題なのかを見極め、その問題に対処するアイディアや表現方法、情報構造を考えるという著者の思考プロセスを、著名な作品を上げながら解説する。

これは自分でも実感していた事だけれど、「何が問題なのか」を見極めクライアントと意識を合わせる事が一番重要で大変だと感じる。「問題を20日で解決しなければならないとしたら私は19日かけてその問題を定義する。」と言ったのはアインシュタインらしいですが、問題さえ定義されれればあとは何とかなる気が最近している。そういう意味では、要件(道具の形)が定義されているプロポーザル方式っておかしいんだよね。その道具で問題が解決できるか分かってもいないのに道具の形を指定してるって。

ひとつ残念だったのは、「本当に商品価値のない商品の場合どういったディレクションをしているのか」という点については、「残念ながらいかんともしがたい」とあっさり切り捨てられていたこと。地方で仕事していく中ではそういうクライアントの場合も結構あると思うんだけど、簡単に切り捨てる事も出来ないし。。。

聖女の救済

2008/10/26(Sun) Book

聖女の救済 表紙
聖女の救済
東野 圭吾 (著)

「何とかしてやれたんじゃないかって思うんですよねぇ。私がぼんやりしていなかったら、あの子の悩みにも気づいてやれたんじゃないかって。」

ガリレオシリーズの「容疑者Xの献身」に続く長編。読み終えて、タイトルに納得。ただ、ちょっとトリックの奇をてらいすぎているよにも思う。たしかに美しいトリックで、犯人にもその資格は感じられるんだけど、「容疑者Xの献身」の時のようにもう少しそこに至るまでの心境の積み重ねがあった方がよかったんじゃないかと感じた。

初恋温泉

2008/10/18(Sat) Book

初恋温泉 表紙
初恋温泉
吉田 修一 (著)

幸せなときだけをいくらつないでも、幸せとは限らないのよ。

読む前にイメージしていたのとちょっと違いすぎて、それを解消しきる前に読み終わってしまった。消化不良感。

悩む力

2008/10/16(Thu) Book

悩む力 表紙
悩む力
姜尚中 (著)

結局、愛というのは、ある個人とある個人の間に展開される「絶えざるパフォーマンスの所産」の謂なのであって、どちらかが何かの働きかけをし、相手がそれに応えようとする限り、そのときそのときで愛は成立しているのだし、その意欲がある限り、愛は続いているのです。

討論系のテレビに出て、勝谷雅彦とかがヒステリックに叫んでいる横で、聞こえるか聞こえないかくらいの落ち着いた小さな声で冷静に話し続ける姜尚中氏の本。売れているらしいので一応買ってみたが、「現代は、自由を手にした代わりに安定を失った社会である。その中では、真面目に考え悩み、自分の納得できる答えを一人ひとりが見つけるしかない」というような話と理解した。

ちょっと話が飛ぶかもしれないけれど、自由と同時に変化の振れ幅も大きくなった現代社会の中では、皇室・天皇家というのは価値が増してきているのではないかと思う。皇室は、変化しない事に価値があるのではないかと思っている。現代ではほとんど消滅した核家族と親族関係を未だに継続し、常に一定の価値観で、国民からも政治からも一歩引いたところにずっと居続ける存在。

現代社会が社会主義と民主主義でケンカしながら一気に資本主義に転換し、バブルで痛い目に遭ったはずなのに、また懲りずにレバレッジ金融を追い求め、またバカのひとつ覚えみたいにそれの全否定に走っている。その中で、常に変わらず存在し続けた皇室には、やっぱりある程度の価値があると思うし、男尊女卑といわれようが男系天皇で行くべきなのかなぁと思う。変わらない事に、価値があるとするのならば。

さて、この本の中でもちょっと浮いた存在の「愛」については、僕も一番分からないところかもしれない。愛とは普遍的な安定した「ゴール」ではなく、お互いの関係性の中で一瞬だけ訪れる「瞬間」じゃないのかなぁという程度は考えているけれど、さて、どうなんでしょうかね。