Posts Tagged ‘ミステリ’

イノセント・ゲリラの祝祭

2009/01/11(Sun) Book

イノセント・ゲリラの祝祭 表紙
イノセント・ゲリラの祝祭
海堂 尊 (著)

「無関心は無知を増大させ、無知は罪を誘発します。」

バチスタシリーズの著者最新作。当初はきちんとミステリ要素があったんだけど、本作に至っては全く事件が起こらず、医療行政への問題提起のみになってしまっている。まあそれはそれで面白いんだけれど、ちょっと著者の医療至上主義的な主張が強すぎる。初期の頃のようなミステリーが読みたいと思うのですが。

TOKAGE 特殊遊撃捜査隊

2008/07/01(Tue) Book

TOKAGE 表紙
TOKAGE
特殊遊撃捜査隊
今野 敏 (著)

警視庁捜査一課特殊犯捜査係の覆面捜査部隊「トカゲ」が活躍する本格的な刑事物、ということでそのネーミングに惹かれて買ったんですが、「トカゲ」はそんなに活躍しない。

何の前振りもなく突然事件が始まり、そのストーリを追うなかでキャラクタが少しづつ登場してくる。一応ミステリチックなのですが、何となく気づけるし後半でネタ晴らしされるのでそんなにインパクトがあるわけではなく、その予想される結末に向かって淡々と進んでいき、事件解決と同時になんの後書きもなくスパッツと終わる。

臨場感と緊迫感はあるのでつまらないわけではないのですが、なんというか余韻がなさ過ぎて。

アンフェアな月

2008/04/12(Sat) Book

アンフェアな月 表紙
アンフェアな月
刑事 雪平夏見
秦 建日子 (著)

「死を自覚することで、生も自覚できた。おかげで、残り短い人生を、それまでの数倍も充実して生きることが出来た。よかったよかった」という話だと男は分析した。

ものによっては、「だから、解釈のしようによっては、自分は病気になって幸せだったかもしれない」とまで、死にゆく主人公に語らせていた。

ミステリらしくないミステリでありながら、ふつうのミステリよりもおもしろい。前作の翌日からのお話で、テレビドラマとは別のストーリー。なので雪平の相棒安藤も元気に生きている。前作の内容はほとんど忘れてしまっていたのですが、それでも十分楽しめました。

スリリング、というよりもおもしろい。冒頭からそれだけで映画やCMのコピーになってしまいそうなハッとする、それでいておもしろい言葉や掛け合いが出てきて、ちゃんと本筋の事件も進んでいるのですが、横道のそのやりとりに気をとられてしまうほどたのしい。

そして、そっちに気をとられていたら、あれっという間に本筋のミステリがあっさり解決してしまって拍子抜け。と思ったら、きちんと最後にメインディッシュがあって、それがまたミステリと言うよりも哲学的な読後感を最後に残してくれる。

命、というものに、正攻法とは全く逆のアプローチで光を当てている。故に、普段見せられる命の形とはまた違った面を見せられて、なんとも言葉がない。引用した文章のような、ありきたりな命の価値観の描写ではなく違った面でその意味を問いかけられて、ぼくはなんとも答えようがなかった。

時をかける少女

2008/04/07(Mon) Movie

時をかける少女

時をかける少女

僕が生まれたのは1983年で、大林宣彦監督の映画「時をかける少女」が公開されたのもその年の事らしい。なので、そういう映画があるという程度の知識と、コアな人にうけたらしいというだけの情報で見てみました。が、恥ずかしながら、最初見たときによく意味がわからず、完全において行かれた状態で映画が終わってしまいました。で、気をとりなおしてもう一回見たら、ストーリーを理解。頭が回っていなかったようです。

他の人がどうなのかは分からないけれど、僕は感動すると背筋にぶるぶるっと悪寒が走るのです。ものすごくきれいだったり、感動したり、ミステリ小説の最後ですべての謎がつながったときにそうなるのですが、この映画の後半で、主人公が最後のタイムリープをする時が、まさにそんな感覚でした。(見るの2回目なんですけどね。)

僕はどうも、本とか映画の感想を書くとき、その作品で感じた感動の度合いに反比例して感想文の内容が陳腐でつたなくなるみたいだ。僕は「何を見たのか」さえ書き表すことが出来ないのに、それを真空パックしてひとつの物語として表現できる人って、ほんとすごい。

時をかける少女 通常版 表紙
時をかける少女 通常版
出演: 仲里依紗, 石田卓也 監督: 細田守

葉桜の季節に君を想うということ

2008/02/10(Sun) Book

葉桜の季節に君を想うということ 表紙
葉桜の季節に君を想うということ
歌野 晶午 (著)

あたしにあたることで気が晴れるのなら、いいことじゃない。外で暴れたら命がいくつあっても足りない。

人はよく、「好き・嫌い」と「良い・悪い」を混同して評価してしまうが、俺はきちんと区別するよ。

ミステリ。真相が分かった一文を読んで、おもわず「えーっ」と声に出してしまった。ちなみに僕は、ミステリは謎を解きながら読むのではなく、著者の思惑通りに読んでびっくりしたいという読み方です。ただ、アマゾンのレビューでも結構賛否分かれていて、僕の「えーっ」も「そういう展開ってあり?」という意味なので、これはナシだろっておもう人も多いかも。

一つ前の「インシテミル」とは異なり、この本はキャラクタの深みがとてもある。書き込みが多いわけではないのですが、その仕草やぽつっと語る一言から心の中で描かれる風貌がとても生き生きとしていて、一人一人が愛おしい。後半ある登場人物が亡くなってしまった時は、涙が出た。本当に死んで欲しくなかったと想った。このキャラクタを演じられるのは、木村多江か奥貫薫しかいない。

インシテミル

2008/02/10(Sun) *Pickup, Book

インシテミル 表紙
インシテミル
米澤 穂信 (著)

クローズドサークル名物、「この中に犯人がいるかもしれないのに一緒になんていられないわっ!あたしは部屋に戻る!」が成り立たない。

ミステリ。ミステリなのですが、普通のミステリというよりも、ミステリ好きに向けたミステリといった方が適切かと。時給11万2000円という怪しげな実験モニタのアルバイトに応募してみると、謎の館に7日間監禁される。実は12人の人々を殺しあうようにしむけ、ミステリ小説のクローズドサークルモノを再現するための実験であり、そこでは互いが疑心暗鬼になり殺しあうように仕向けるためのルールや仕掛けが色々と仕組まれていたのだった。という話。まあ密室物です。ライアーゲームのような世界観かな。

面白いのは、実際に12人がだんだん死んでいく中で探偵役も自然と生まれてくるわけですが、その館には館のルールがあって、実際に正しい推理をすることにあまり意味はなくて、その場にいるメンバーの半数以上の支持を得た推理が正しい推理とされるのです。だから、実際には間違ってても良い。支持を得る方が大事。

そして、時給11万2000円の他に、推理をしてそれの支持が得られると報酬が倍になったり、人を殺すと倍になったり、推理に失敗すると半額になったり、殺害に失敗(or成功後推理によって犯人とされる)になると、時給が一気に数百円に下がってその後の実験に参加できなくなったり。といった感じ。ただのミステリと言うよりも、ミステリの要素を皮肉った(?)世界観。何もしなければ全員平穏無事なわけですが、そうはいかないわけで。

そんなに古典ミステリは読んでない僕でも楽しめましたが、読んでるとより楽しめたんだろうなと思う。そういった要素が前面に出ているので、キャラクタの深みとか、登場人物の背景とか、リアリティが薄いのですが、それはまあバランスの問題でしょうか。それを書いていると本題がぼやけてしまいますから。結構オススメです。

交渉人

2008/02/10(Sun) Book

交渉人 表紙
交渉人
五十嵐 貴久 (著)

警視正。これはあなたが教えてくれたことです。
わたしはあなたが教えてくれた通りにしただけなんです。

某氏に教えてもらった本。ミステリなので、なんとも感想は書きにくいのだけれど、かなり面白い。物語は途中で大きく転換するのだけれど、それまでの交渉のかけひきもスピーディーでのめり込んでしまうし、転換後の展開もまた読ませる。最後の方に出てくる「理解し合えないからこそ議論する」という言葉は胸に来る。

物語が転換するキーとなる要素は、確かに僕も読んでいて何となく引っかかった要素だった。読んでいる時はその違和感が分からず読み進んでしまったけれど、後から読み返すと実にうまい見せ方だったと思う。主人公が最初と最後以外はあまり出てこないというのも珍しい。そのせいで主人公のキャラクタがあまり伝わってこなかったことだけ、少し残念。

真鶴

2008/02/10(Sun) Book

真鶴 表紙
真鶴
川上 弘美 (著)

夜の九時頃って、人は何を考えるのかしら。聞いた。
さあ。夜の三時や、あけがたの四時に感じることならば、知っているけれど。
青磁の答えに、顔をあげた。三時や四時?
三時は、少しの希望。四時は、少しの絶望。

「失踪した夫を思いつつ、恋人の青茲と付き合う京は、夫、礼の日記に、「真鶴」という文字を見つける。“ついてくるもの”にひかれて「真鶴」へ向かう京。夫は「真鶴」にいるのか?」という紹介文から、ミステリのようなものかと思っていた。でも実際は、何ともつかみ所のない、化かされたような感覚になった本。

感情の表現や、それを言葉に落とす時の日本語の使い方がとにかく美しい。全体を通すととても静かな文体なのだけれど、その中に鮮やかに感情や情景が浮かんでくる。女性の主人公の心理描写の中には、愛おしいあまり狂気に変わってしまったような表現や、男の僕には何とも理解しがたい心の動きがあったけれど、女の人が読めばまた違うのだろうか。

特にベットシーンの描写が、今まで読んだどの表現とも違う。露骨な表現はしていないのだけれど、けして避けて書いているわけでもない。その行為を通じて形作られる二人の心情についてはもの凄く鮮やかに描かれている。そしてそれがまたとても美しい。

「ついてくるもの」や、「夫はどこへ行ったのか」については、最後まで僕ははっきりとした答えが分からなかった。一応の解釈が出来るようにそれらしいことは描写されているのだけれど、なんだか狐に化かされているような、どこか信じ切れない読後感。

GOSICK

2007/06/30(Sat) Book

GOSICK 表紙
GOSICK
桜庭 一樹 (著), 武田 日向 (イラスト)

桜庭一樹を乱読中。赤朽葉家の伝説とは全く違うライトな感じだけど、土曜日の朝に読むにはちょうどいい感じだ。一応ミステリなのだけど、わかりやすいと言えばわかりやすい。ミステリに関わらずだけど、ミステリは特に登場人物のキャラクタが大事なんだなぁと思う。

アヒルと鴨のコインロッカー

2007/03/25(Sun) Book

アヒルと鴨のコインロッカー 表紙
アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂 幸太郎 (著)

-そうか、わたしは自覚している以上に脆いのだ。-

ちょっと以外だった。微妙な人間関係の間に築かれる空気感を書いているのかと思って読んでいたら、最後に少しミステリ的な展開が出てきた。本だから書けるお話ではあったけど、琴美と麗子と三人組のキャラクタがもっとしっかりしていたら、より面白かっただろうと思う。